また何かそして別の聴くもの

だらだら坂から - 日々のヴァラエティ・ブック

公園に行かないか?火曜日に

コロナ禍がやってきて、我が職場でもランチタイムは大きく様変わりした。外食はもちろん自粛。職員食堂では私語厳禁、皆が一方向を向いて座り、黙々と食べるのみである。まるで誰もが囚われの身であるかのようだ。

かつてのランチタイムは、職場近くの小さな公園に行き、ベンチに座って、サンドウィッチなどの軽食と煙草を一服するのが常だった。公園といっても、小さな遊具がひとつ置いてあるだけの、遊ぶ子供たちもいない寂れた公園である。── なんと灰皿は公的に設置されていた ──

そんな昼休み、いつもその公園で一緒だった同僚の男女二人がいた。彼、彼女は煙草を吸わなかったので、今思うと何だかそこだけ気の毒になる。とにかく、仕事上の愚痴を笑いを交え披露し合う、といったどこででも見かけるひとときであった。

それにしても煙草には後悔しかない。止めたのは去年の3月。体調を崩したことを期に、即禁煙を決意した。よく止めましたねーと周りから口々に笑われたが、医師から脅されたこともあり、なんとも呆気ない幕切れだった。ラッキーだったと思う。

ほら チャイムを鳴らし 背中をたたき もうすぐランチタイムが終わる

そう、あっという間にランチタイムは終わり、三人は重い腰を上げ職域に戻る。

たった1時間とはいえ、暑い夏も、寒い冬も、あの公園のベンチで過ごした日々は確かにあった。当たり前にあった日常も、いまとなっては映画の回想シーンのように美化されてしまう。

そして、世の中がパンデミック色に変色し始め、今日からあの公園には行けないな、という「今日」が必ず存在したはずなのだが、それがいつだったのかも思い出せない。

こんなささやかな習慣でさえ、あの憎き疫病は変えてしまったのである。もしも世の中が変わり、以前と同じ日常がまた戻っても、昼休みにあの公園に行くことはもうない気がする。

待ち合わせたレストランは もうつぶれてなかった

あっという間に飲食業界も厳しくなり、出不精な私の行動範囲でも、知らぬ間に畳んでしまったお店がいくつか。先日、神戸元町を歩いていたら、むかし通っていたBARが違う名前になっていて、思わず声をあげてしまった。

都築響一『Neverland Diner──二度と行けないあの店で』

内容説明

僕をつくったあの店は、もうない――。

子供の頃、親に連れられて行ったレストラン、デートで行った喫茶店、仲間と入り浸った居酒屋……。誰にも必ず一つはある思い出の飲食店と、舌に残る味の記憶。

 都築響一氏の著書は、正直「TOKYO STYLE」しか所有していないのだが、コレは読んでみたい。