また何かそして別の聴くもの

だらだら坂から - 日々のヴァラエティ・ブック

木曜日を左に曲がる

午前中のゲリラ雷雨が嘘のように外が明るくなった。明日、休みを頂いた私はもっと明るくなった。胸いっぱいの解放感が早めの退勤を促す。ターンレフト・ターンライト。右に曲がればいつもの帰路だが、今日は左に曲がり、買い物にでも行こう。

阪急オアシス三宮店のサラダボウル専門店「WithGreen」で、“ハーブチキンと彩り野菜のサラダ“を買う。ハニーミルクのドレッシングとの組み合わせが最高なのである。

ルビアン・ルミネールで、ライ麦パンとバナナブレッド。明日の幸せな朝のために、ルバーブのジャムはもうスタンばっている。

上島珈琲店で黒糖ミルク珈琲を飲んで、もう満足。なのだが、三宮は人、人、人。さすがにデパ地下は入場制限しているものの、このたびも緊急事態らしきエリアは何処にも見つからない。逃げるようにいつもの帰路に合流する。

 「しかし、よく書いたよね、こんなものを…」と北村薫に言わしめた、とっておきの名短篇! 穂村弘「愛の暴走族」、川上弘美「運命の恋人」、戸板康二「酒井妙子のリボン」、深沢七郎「絢爛の椅子」、松本清張「電筆」、大岡昇平「サッコとヴァンゼッティ」、北杜夫「異形」など、目利き二人を唸らせた短篇が勢揃い。

 そう、あらためてウンウン唸らされる。傑作揃いの短編集、ちくま「名短編」シリーズの中でもコレは圧巻だ。このコンパイルのセンス!「しかし、よく集めたよね、こんなものを…」なのである。

収録作品に共通する後味の悪い読後感は、すぐに快楽へと変質する。塚本邦雄「壹越」の白色に統一される文体の美しさ。やみつき必死のお馴染み深沢七郎オフビート劇。

なかでもレア作品、岡田睦「悪魔」!主人公の女教師は、妙な行動を取り続ける男子生徒が気になりだし・・・優しい文体と終始救われぬ現実とのギャップが切なすぎる。そして衝撃のラスト!

宮部 最近「奇妙な味」って言わなくなりましたね。昭和四十年代は特集の柱になってたのに。

北村 江戸川乱歩以来の伝統でね。

江戸川乱歩が定義したとされる「奇妙な味」については以下のサイトが詳しい。

pdmagazine.jp

ショックはいらない、ただゾワゾワしたい、をお求めのアナタ、「とっておき名短編」を是非。